戻り

次世代トラディショナリスト 詳細紹介

福留房幸(本名裕晃)1985年1月4日福岡県福岡市生まれ

平成17年1月二十五代藤原兼房刀匠のもとに入門し同22年文化庁より作刀許可を受ける。


刀鍛冶だと自己紹介するとたいていの方は、そんな職業現在でもあるのか、なぜそん
な仕事をしているのか、とよく訊ねられます。私の場合は高校の時に写真部の活動で
近所の鍛冶屋さんの写真を撮りに行ったことが始まりだったと思います。何度か訪ね
て仕事を見せて頂いたとき、見る間に形を変え様々なものが出来上がるのを不思議に
思いながら眺めていました。また、幼少の頃は謡曲を習っていたこと、祖母、母が茶
道を教えていたことから様々な工芸や文化に興味がありました。それから時が経ち高
校を卒業するときに、あと数十年後には様々な工芸や民俗的行事を支える技術は、ほ
とんど失われてしまうのではないかと考え、何ができるかもわかりませんでしたが、
印象の強かった鍛冶を特に刀鍛冶をやりたいと思い立ち二年ほどあちらこちら流れて
現在の師匠に入門しました。

ところでみなさんは刀鍛冶と聴くとどんな想像をされるでしょうか。

一般に刀鍛冶というとイメージが先行し色々と誤解されやすいようです。しかし、社
会と隔絶し昔のような生活をそのまま行っているわけではなく、刀鍛冶もそれぞれ現
代社会に則して変化しています。多くの方が、刀鍛冶といえば毎日鎚を振り火花を散
らしながら刀を鍛えている、と思われるのではないでしょうか。しかし実際には、製
作工程だけでなく、営業、経理、銃刀法関連事務、作刀研究等に多くの時間を割かれ
ます。また更に製作工程の中でも、炭切りや冷間成形、粗い研磨、彫刻等様々な工程
があるため、実際に火花を散らして鍛錬するのはそんなに多くはありません。また、
他の仕事と兼業で行っている方も多いようです。

私はまだ兼房刀匠の門下におりますが、どの様な生活かある一日を掲載してみます。

06:45起床

朝食等

08:00始業

掃除及び見学準備

来客、師匠鍛錬実演手伝い説明等

12:00〜13:00昼休み

彫刻

17:00終業

帰路途中のスーパーにて食糧補給

 18:00帰宅

 調理、夕食、準備

 19:30出発

 20:00弓道場着

 弓道練習

 22:30道場発

 23:00帰宅

 24:00就寝

 このような流れで生活しております。

 趣味で弓道をやっていますが、この日は練習日のため行ってきました。弓道は高校
の時に始めたのでもう十年ほどになります。かつて、古い弓術書に弓術十戒という文
章がありその中に「一、鎚振るべからず」という心得がありました。どうやら刀鍛冶
とはかなり相性が悪いようです。残念残念。

 それはさておき、昨年作刀許可を取りましたので、今年は私も独立をせねばならな
い訳ですが昨今の情勢は厳しく、はたして注文を得て刀鍛冶を生業として生きていけ
るかと不安で一杯です。しかし、続けられる限りは一振りでも多くの刀を作り、遥か
な古人の技と心に近づくことができればと思います。

 漱石の一文に「あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするがゆえ
に尊い。」とあります。私の作る刀によって、ひとときでもそのような心持になって
頂けるようになることが私の目標です。道ははるかに遠く、その道程すらも今はわか
りませんが、無駄足を踏んでもとにかく歩いて行きます。迷走している私を見かける
ことがありましたらご助言下さいますよう、よろしくお願いいたします。