論述０１（鈴木卓夫）

「鉄仏の製作年代と古伝書「古今鍛冶備考」からみた
　銑押し法と鉧押し法の成立期の検討

１．諸言

たたら製鉄とは、粘土で築いた箱形炉で、原料を砂鉄とし、燃料に木炭を用い、
送風動力に鞴を使用して、極めて純度の高い鉄を生産する日本古来の製鉄技術と
概念規定することができる。

そしてこの技術の開始期については、記紀に記された内容、和名・姓氏の発生、
さらに遺跡の調査などから５世紀前後と考えられるが①、製鉄遺跡から見た場合には
６世紀後半から７世紀初頭とされる岡山県久米郡久米町の大蔵池南遺跡などがあり、
ここからは６基の炉をはじめ、送風口を伴った炉壁・木炭・鉄滓などが出土していて、
送風口を伴った炉といしては日本最古のものとされている②。

以来たたら製鉄は今日に至るまで技術の継続をみるが、いつの時代にか、銑生産を
目的としたものと鋼生産を目的としたものとの二大製鉄技術が成立し、前者を
「銑押し法」、後者を「鉧押し法」と呼んでいる。著者はこれらを自給自足に
よるものとは区別し、産業的、もしくは企業的たたらとして位置づける。

しかし、この両技術がいつの時代に成立したかについて諸説はあるものの明確に
なっていない。そこで本論においては、銑押し法と鉧押し法の成立期について、
鋳物の代表的製品であり、また、茶釜などとは異なり、長い歴史をもつ鉄仏の
製作年代と、我が国の製鉄事情について述べた江戸期の古伝書「古今鍛冶備考」
をもとに考察する。

２．古代の製鉄技術
３．調査の方法
３．１　鉄仏の調査
３．２　古伝書「古今鍛冶備考」の調査
４．結果
４．１　鉄仏の調査
４．１．１　製作時代による製作点数の分類
４．１．２　製作年紀による製作点数の分類
４．２　古伝書「古今鍛冶備考」の調査
５．考察

６．結論

本論の題目による調査に限ってみた場合、銑押し法は鎌倉時代には本格的なものとして
成立していた。鉧押し法が開発されたのは室町時代後期、天文頃である。以後両技術は、
近世に至ると一度の操業で量産を可能とする大型炉による、より高度な生産技術へと
進展していったものと考える。

７．補完
文献