「美濃鍛冶小論」
14−2 一大刃物産地として栄える
現在の関の地は、前記の如く日本国内でも有数の刃物産地として名高く、
年間生産総額四百五十億円、その四十パーセントが輸出される一大刃物産地
として栄え、刀剣関係職方も、行政、商工会等の強い後推しで伝統の技術を
活かし活躍されておられます。
日本刀関係に従事する職方は、刀匠・金子孫六、加藤考雄兼房氏を筆頭に
十八人、研師十八人、鞘師八人、その他柄巻師、白金師、彫師、塗師、*工等
日本刀工作の全搬に渡り、多くの方々がそれぞれの職場での活躍には目覚ましい
ものがあり、「関の日本刀」の名で、美術刀剣愛好家、居合関係の方々には
なかなかの人気のようです。
また、名刀孫六の名跡を利用した模造刀の製作なども行われており、
刀剣の町「関」の名もいろいろの所に利用され、二代兼元孫六も、墓場の中で
苦笑いをしているのではないでしょうか。
刀職関係の方々の今一つの活躍の場は、刃物産地としての広報、宣伝活動が
あり、この方面にも積極的に協力され、中でも同市春日町、春日神社西隣
産業振興センター内に設立された「日本刀鍛練場」に於いて月一回行われる
鍛練実演は、古式そのままの装束で、むこう鎚を相手の古式鍛練実演、鞘師、
研師、その他職方による実演は、一搬の方々には大変好評のようで、関地方の
観光の目玉にもなっております。
この様子は、年数回マスコミ(テレビ、新聞)等により採り挙げられ、
その宣伝劾栗はバッグンの様子で、そのためかどうか当地方に於いては、
講談等にて語り広められた、希代の名工「関の孫六、三本杉」と共に日本刀
イコール「関」と言う短絡的な考えが侵透し、マスコミの力の大きさに
つくづく感心させられる思いがいたします。
また、刀剣関係職方による地道な公報活動には頭の下がる思いがいたします。
閉鎖的な刀剣界での異例の活動により、たとえ一人でも愛刀家が誕生する
ことになれば、刀剣界にとっては喜ばしい事でしょう。
また、刀剣関係職方も、この様な行政等のバックにより活躍できる環境に
甘える事なく、先祖美濃鍛冶の活躍の原点に立帰り、日本刀本来の持つ「厳しさ」、
「美しさ」に迫る部分の研究に、より一層の努力を期待したいと思います。