「美濃鍛冶小論」
15−1 資料押形にみる美濃刀の年紀
今回は、以前本紙四五五号に取り上げました「美濃鍛冶の年紀を刻した刀」の際、
調査しました資料を紹介させていただきます。
美濃鍛冶に年紀を刻した作品が少ない理由は、その際説明させていただきました
通りですので省略させていただきます。
室町時代の中期より末期にかけて、おそらく製作本数においては全国一を誇った
美濃鍛冶にも、注文生産システムは存在し、それ等注文作品には、作者銘はもちろん、
製作年号、中には注文主等を茎に切り付けた作品は、現在も多数残されています。
それ等、現存作品の全てを調査する事は私には不可能な事で、多くの人々の協力を
仰がなければなりません。
今回は、私の手許にあります江戸期を中心にした押形本より、美濃鍛冶の年紀を
刻した作品を拾い出してみましたので、ご紹介させていただきます。美濃鍛冶の
時代の変遷を考えるのに参考になればと考えます。
調査しました「押形本」は、古刀に限りましたので次のとおりです。
『往昔抄』、『埋忠銘鑑』、『光山押形』、『古今銘尽大全』、『古刀銘尽大全』、
『土屋押形』、『今村押形』、『本朝鍛冶考』。
これ等「押形本」の内容については、本紙連載の得能一男氏執筆になる「古書遍歴」
に詳しいので、そちらを参考にしていただくとします。また、これ等押形本所載の作品に
ついては、「貞宗」、「江」等に長銘作品が所載される等、いろいろなご意見をお持ち
の方もある様ですが、今回の目的の美濃鍛冶の大な動向を捉まえる事には支障は
なく、かつ最低限の資料と思われます。
各押形本重複所載の刀剣がありますが、明らかに同一作品と認められる以外は
別作品として扱いました。本来ならば、この様な調査の際は、作者銘等により時代の
明らかな作品が多数所載されていますが、製作年号までの、特定ができませんので、
年代別の本数に数える事はず、今回は、製作年号を刻した作品という事で一線を
引きました。
各押形本の所載内容全て記します事は、紙の関係上できませんので年号別(十年
間隔)の本数を別記させていただき、傾向を理解しやすいようグラフにしてみました。
(表1参照)