「拵(こしらえ)の魅力」
5 尾張拵・柳生拵・肥後拵
「お国拵」と呼ばれ地域性をもった拵がある。その代表的なものに
薩摩(さつま)拵・肥後(ひご)拵・庄内(しょうない)拵・尾張
(おわり)拵などがよく知られている。ここでは実用を旨とする
武士の精神が生きた拵である、地元愛知の尾張拵、柳生拵及び、
これらと共通点の多いとされる肥後拵の主な特徴の一部を以下に
紹介する。
【尾張拵】
武骨なほどごつく感じる丈夫な部品を諸所に使用しているものの、
鞘の細工や鞘尻には酒落た部材を使用するなど粋な指料もみられる。
●縁の内径に頭がスッポリ納まる。
●鵐目(しとどめ)金具の紐を通す穴の隅が丸く角ぼっており、
口金部分には花文様の飾りを造形。
●柄巻きの菱形が比較的大きい。
●柄糸の織目が一般のものとは逆。
●目貫は厚みを少なく平板にした目貫を使用。
●鞘口の木見せ。[角(つの)材は漆を塗るが、朴材には漆を塗らず
中白ままにする]
【柳生拵】
尾張藩主2代徳川光友の兵法指南役であった柳生連也斎厳包
(1625〜94)が考案して、指料としたものを本科とし、それを元に
製作された拵を柳生拵と称す。柳生拵は一般的に尾張拵の範噂と
されている。
●目貫の位置が通常の拵のものと表裏逆(指表は頭に近く、裏は
縁寄り)につく。[手だまりがよい]
●尾張拵の頭は縁より小さいが、柳生拵の頭は鉄地に山銅
(やまがね)混じりでかなり大きい。
●柄は頭・縁が大きく真ん中が絞ってある立鼓(りゅうご)形。
[片手打ちに適す]
●柄の刃側が平ら(棟の稜線を凹ました形態)で握りやすくして
いる。
●小がらであった連也斎の体型にあわせてか、寸法は2尺
(約60.6cm)弱と比較的短い。
●その他、鞘など主だった点は尾張拵と同じ様式。
【肥後拵】
肥後(熊本)藩主であり茶人としても知られていた細川三斎の
創作拵で、茶道の感覚と居合の実用性を兼ね備えた堅牢な作りと
される。幕末には江戸を中心に流行し「江戸肥後拵」と呼ばれ
区別されるようになる。
●抜き打ちに適した短い寸法のものが多い。
●柄も短く立鼓形。[片手打ちにむく。両手で打ち込むより
刀の届く距離が延び、居合に有利]
●金具は肥後金工作の鉄物が多い。
●頭は縁側より小さく鮫皮で包み黒漆を掛ける。
●柄巻きは鹿革で漆掛け、鞘も鮫皮でくるむことが多い。
●鐺には鉄の泥摺りという金具をつけ、返角も栗形の上側を向く
ように角度がつけられている。