「拵(こしらえ)の魅力」

7 本多家の拵〜『向陽古今図録』より〜



 岡崎市は江戸時代後期に三河岡崎藩主を務めた本多家から様々な
資料の寄託を受けている。

『向陽古今図録(こうようここんずろく)』(全
12巻・巻2欠)とは、
岡崎藩士の田中宗確が本多家にまつわる宝物等を明治
16年(1883)に
書写した折本で、江戸後期の大名家の所持品を伝える貴重な史料の
一つである。

これを刀・刀装具に関する記述に注目して見てみると、その記述は
比較的多く巻
6図版7−1)(図版7−2)・巻7(図版7−3

2冊に及ぶ。77振の刀剣とともに拵の記述がされており、拵全体が
図示されているもの
12件、柄や小道具のみ図示46件、それとは別に
幕府お抱え工の後藤家歴代の三所物(みところもの)などの図が
納められている。


また大名家所有品らしく儀杖用の細太刀拵(図版7−2)や糸巻太刀拵を
はじめ、平常指の脇指や短刀拵などもそれぞれ鞘・柄・はばき
・切羽(せっぱ)・鐔・目貫・小柄・笄など各部位ごとに細かな
記述がされており、改めて刀が武士の表道具として大切に伝えられて
きたことがわかるのである。