当支部会員参加による行事日程

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 古式日本刀鍛錬 一般公開
 刀匠、研師、柄巻師、鞘師、白銀師の実演
 1月2日、3月,4月,6月,11月の第1日曜日
 10月は、関市「刃物まつり期間」に開催



平成24年度「支部活動」日程

支部活動 期   日 会   場
 1回定例研究会・総会  平成24年 5月27日(日)   関市文化会館
 2回定例研究会  平成24年 7月 8日(日)   岐阜市南部コミュニティセンター
 3回定例研究会  平成24年 9月23日(日)   関市文化会館
 4回定例研究会  平成24年11月25日(日)   岐阜市南部コミュニティセンター
 5回定例研究会・懇親会  平成25年 1月20日(日)   ホテルスポーツパルコ
 6回定例研究会  平成25年 3月31日(日)   岐阜市南部コミュニティセンター

※ 研究会に一般参加・見学を希望される方は事前に、住所・電話番号・氏名・年齢・職業を記してお申込み下さい。

申込先 : 〒500-8258 岐阜市西川手四丁目20番 岐阜市NPO日本美術刀剣保存協会岐阜県支部

        (当日の飛び入り参加、および反社会的組織に関係する方は固くお断りいたします。)

尚、参加会費は 6,000円/1回 を申し受けます。

 ◆平成25年3月31日日曜日は博多支部の米田一雄氏を講師にお招きし、平成24度第6回研究会を
  岐阜市南部コミュニティセンタ−において開催しました。
 
 1号刀 刀銘: 無銘(雲重)重要刀剣
   大磨り上げ、切先が伸びて身幅があり、映りがあることから南北朝の備前は外せません。
   元踏ん張りが抜けているため、大磨り上げという事が解ります。
   入札の多くは、備前に集中したものの、義景・長義・盛景・長光に札が散り、
   雲重に入札されたのは、支部長お一人でした。
   ポンポンと指の腹で押したような黒い地斑映り、暗帯部があり、
   その個性がよく現れている素晴らしい作品です。
   また、本刀を雲類と見られた方は僅かに3名と少々難解でありました。

2号刀 刀銘: (表)於江府濱部見龍子壽幸造 (裏)安政二年二月
   山陰因幡の壽實の子、山陰は鉄の産地でありながら地元需要が乏しかったと思しく江戸打ちが多い。
   入札は殆んどが固山宗次・細川正義などの江戸新々刀に集中しましたが、個銘の当たる刀工ではないので
   同然扱いでした。

3号刀 短刀銘: ()備前長舩祐定 ()明應六年二月
   諸刃の短刀は短寸で、反りがなく、刃文の片側が乱れても返りは直ぐ調となる場合、時代が上がるものが多く、
   茎も上身に比して長くなる特徴が見られます。本刀はその典型作でありほとんどの方が当たりか、忠光など
   同時代の札に入れておられました。
   肥後象嵌一作の素敵な小さ刀拵えが付いていました。

4号刀 脇指銘:(表)薩摩住藤原正房 (裏)文化十年葵酉九月
   幕末の正房です。正房一派は、寛永頃に美濃から薩摩に行って上品になったと言われており、
   本刀には薩摩の芋づると称される太い金筋が見られない。そのため薩摩と見るのは難解でしたが
   脇差ながら切先が伸びている点に薩摩新々刀の特徴を見ることができ、荒沸が深くつくところも
   お国柄と言えます。

5号刀 脇指銘: (表)和泉守國貞
   井上真改の初期銘、初代親國貞の次男。
   平肉豊かについた上品な大坂新刀。
   小板目よくつみ地沸厚く付き、細かい地景が入る。刃文は大坂焼き出しを見せ、浅い湾れに互の目を交じえ、
   匂い深く明るく冴える。
   秋田の佐竹家旧蔵と伝わる名品。


 平成25年1月27日(日)は、博多支部主管による初の九州ブロック大会が福岡市中央区天神の警固神社
  神徳殿において開催されました。
 
  支部交流のある弊支部にも御招待を頂き、協力出陳刀に特重剣銘:来國次/嘉暦二年三月八日、 重要太刀銘:
 延吉(千手院龍門)、短刀銘:筑州住國弘/正平三年三月日、 刀銘:以英彦山神水使豊後國紀定行造之…云々
(天保五年紀)の四振りと一本入札天位賞品にとノサダの押形額装を提供させて頂き、支部を代表して近藤支部長が
 参加いたしました。

 当日は小雪のちらつく凍てついた空模様ながら、会場内は数々の名刀を前にした参加者の熱気に包まれて盛会の
 まま時が過ぎたとのことでした。

 詳らかには何れ博多支部ホームページhttp://nittouho.jp/に公表されることと思います。

 さて一本入札鑑定刀ですが、協会本部から学芸の石井講師が用意された。
 一号刀:脇差 津田越前守助廣
 二号刀: 刀  大磨上無銘伝青江(南北朝期)
 三号刀: 刀  藤原廣實(堀川)
 四号刀: 刀  大磨上無銘伝正宗(享保名物武蔵正宗)
 五号刀: 刀  大和守安定

 の五振りであり成績発表の結果、弊支部が提供したノサダ押形額装は近藤支部長が一番入札で天位獲得、
 持ち帰ることになり、会場一同の大顰蹙?を買ってまいりました。


 ◆平成25年1月20日は協会本部学芸員久保恭子先生を講師にお招きして新年研究会と懇親会を岐阜市内ホテルスポーツパルコにおいて開催いたしました。
    
 研究会は一本入札で行われ、鑑定刀は1号刀 太刀銘:安綱、2号刀 太刀銘:来國光、3号刀 刀銘:國廣、
 4号刀 刀金象嵌銘:盛景、5号刀 短刀銘:備州長舩元重/正和五年六月日の五振りでした。

 研究会終了後、上位成績者の表彰が行われ、講師久保先生より3号刀の國廣は単なる志津写しではなく、樋の掻き方
 平肉の落ち方まで忠実に写しており、これを多くの方が本歌と見誤られておりましたが、尤もな見方であり素直な
 鑑識眼だと思います。
 國廣もこのように見られればさぞや本望であることでしょうという御褒めとも、慰めともとれる入札の感想があり
 ました。

 懇親会の〆には恒例の新年運試しビンゴゲームが行われ、直江兼次短刀押形ほか刀剣図録、缶ビールセット、
 カトラリーなどの賞品が次々と幸運者の手に渡っていきました。

1号刀 太刀銘:安綱 (押形/写真
   腰反り高く、元に踏張りをつけ、先にいって反りが浅くなる藤末鎌初姿。地鉄板目に杢を交えて大きく肌立ち、
   鉄色が黒みを帯びて鮮明な地斑映りが立つ。刃文は強く沸づき、砂流し、金筋などの働きが盛んであり、
   焼き落としがある。
   入札には古備前観もあったが地鉄に大板目などは混じらず、黒みを帯びることもない、また焼き落としも
   見られない。長府毛利家伝来品。

2号刀 太刀銘:来國光 (押形/写真
   幅広で元先の巾差が目立たず、腰元の踏ん張りがやや抜けた太刀姿に輪反りの深い造り込み。地鉄板目がつみ、
   部分的に大模様の肌合いを見せ、地景細やかに入り、沸映り立ち、佩き表横手下に段映り状の湯走りを見る。
   刃文は直刃を基調に小互の目、小丁子を交え、金筋、砂流しかかり、京逆足が入る。帽子は直ぐに先小丸、
   裏は尖りごころとなる。
   輪反り姿と独特の大肌、所謂来肌で鎌倉末期の来派と捉えられる。その中で比較的穏やかな刃文と段映り
   風の景色を見せるのは國光となる。
   本科は柳沢吉里が従四位下越前守に叙位任官した際に父、吉保より贈られた。

3号刀 刀銘:國廣 (押形/写真
   身幅広く、重ね薄く、元先の巾差目立たず、反りが浅く大切先。表裏に二筋樋を掻き流す。鍛えは板目に
   杢交じり、肌立ち、地沸ついて地景細やかに入る。刃文は浅い湾れを主調に互の目、小湾れ交じり、物打ちより
   横手にかけて焼き幅を広め、沸よくついて処々むらづき、金筋、砂流し細やかにかかり、匂い口沈みごころ。
   帽子は乱れ込み表は小丸、裏は尖りごころ。
   前述した久保先生の入札感想通り、地刃に古色があり、堀川物に多い水影が立たず、研ぎ減りまで古作を忠実に
   再現した作と思われ、やはり志津観が多くを占めていた。

4号刀 刀金象嵌銘:盛景 (押形/写真
   身幅広く、元先の巾差目立たず、反りが浅く大切先。表裏に棒樋を掻き流し、樋先下がる。鍛えは板目に
   杢交じり、総体に肌立ち、地沸ついて地景入り、地斑現れ、淡く乱れ映り立つ。刃文は小湾れを主調に
   角張る互の目、小丁子等を交え、匂い口沈みごころ。帽子は乱れ込み、先尖って返る。
   延文・貞治姿の大摺上げ。淡い映りと湾れ基調の刃文から相伝備前と見て兼光、長義観が多かった。
   また、3号刀と並んで本科の方が重ね厚であるためか時代を下げた札が見られた。

5号刀 短刀銘:備州長舩元重正和五年六月日 (押形/写真(/))
   体配はほぼ常寸で内反り、重ね厚。板目肌立ち、総体に強く流れて処々柾がかり、地沸ついて乱れ映り立つ。
   刃文は角互の目を主調に互の目、片落ち風の互の目を交え匂い勝に小沸つく。帽子は乱れ込み、先小丸に長く
   返る。
   柾気が目立ち、地蔵風に見紛う帽子から末関への入札が目立った。然し同派であれば谷が陰に尖った
   角互の目を見ることはなく、体配も鎌倉末期姿である。因みに本作は元重現存中の最古年紀を刻している。
 

 ◆平成24年11月25日 講師に株式会社舟山堂稲留社長をお迎えし、定例研究会を岐阜市南部コミュニティセンターにおいて開催しました。
 
 1号刀 太刀銘 表:備州長舩住元重 裏:観應三年八月 日
   細身、小切先、中反りこころの太刀姿。鍛えは板目肌立ち、地沸、地景がついて相州気質が窺える。
   刃文は広直調に逆足、逆丁子、葉が盛んに働く。閑院宮家伝来。
   逆足が目立つ点から圧倒的に青江観が多く、次いで景光、長光、雲生に札が散ったが、多くが三の札まで
   に元重へと導かれていた。

2号刀 刀銘:國廣
   身幅広く、元先の巾差少なく、重ねやや厚めに大切先。地鉄板目が肌立ち、地沸がついてザングリと
   表現される堀川肌。
   刃文は小湾れに互の目交じり、飛び焼き、湯走り、棟焼きがしきりと掛かる。
   志津写しであり、慶長七・八年頃の銘と見られる。
   同工の典型作であり、半数の方が一の札で、残りの方も二の札で当りを取られていた。

3号刀 刀銘:肥前國住近江大掾藤原忠廣
   刀姿が尋常で美しく、地鉄は小板目がよくつんで明るく冴えた米糠肌。刃文は刃先と綺麗に並行する中直刃を
   焼き、帽子もそのまま綺麗に小丸で返る。
   本刀も肥前刀の典型作であるが、あまりの鍛えの見事さに三代陸奥守と見た札が目立った。

4号刀 短刀銘:越中守正俊
   身幅やや広く先反りつく慶長姿。鍛えは板目に杢交え、地沸ついて地景掛かる相州伝。
   刃文は頭の丸い互の目乱れに切先を顕著な三品帽子で焼く。三品四兄弟中、一番上手で作域が
   広い同工の志津写し。
   やや美濃気質が見られるのか末関の札も散見されたが、多くは金道と正俊に集中していた。

5号刀 短刀銘:兼栄(かねひで)
   先反りのやや目立つ末古刀姿に、板目肌が刃寄りに流れ、やや白けた鍛え。刃文は頭の丸い、
   いわゆる兼房乱れを表裏揃えて焼く。
   個銘の当る鍛冶ではないが、流石にご当地もののことであり、全員の札が氏房、兼房の二工に集中していた。

今回は参加者18名とやや低調でありましたが、全員が入札参加し、平均点も好調のうちに終わりました。

   

 ◆平成24年9月23日 早川三重県支部長を講師にお迎えして定例研究会を関市文化会館で開催しました。
 
1号刀 表銘:正恒、裏朱銘:正徳○年折紙代金子弐拾枚の太刀
  摺り上げてやや細身であり、反り浅めに小切先に結ぶ優雅な姿。
  よく小沸づいた直刃に小乱れ、足が入り、焼き出しが潤み加減となる。
  帽子は直ぐに先僅かに返り、映りが弱く、京気質があると見て来一派や同じ備前ものでも雲類に見た札が多かった
  が、直ぐに軌道修正されて古備前に入っていました。

2号刀 表銘:武蔵大掾藤原忠廣 裏銘:寛永三年八月吉日 の脇指
  先反りのついた菖蒲造り、身幅広く、表裏に棒樋と添え樋を丈比べとし、細やかに沸づきよく詰んだ小板目に直刃
  を焼く。
  一見して慶長新刀と見てとれ、直刃を得意とした肥前刀と素直に見た札が過半を占めていました。

3号刀 表銘:固山備前介宗次作切手後藤新太郎嘉永七年寅十一月四日於東都千住太々土壇拂 
    裏銘:嘉永七年二月吉日の刀
  身幅広く元先の幅差少なく、切先が延びて手持ちの重いがっしりとした姿。
  小板目よく詰んで明るく、いわゆる馬の歯と称される互の目を焼く。新々刀の中でも個性がはっきりしており
  正解率の高い出陳刀でした。

4号刀 表銘:和泉守藤原國貞 いわゆる親國貞の脇指
  平造り、身幅広く先反りつき、表に真の見返り龍、裏に腰樋に添え樋と梵字を重ねて彫り、沸深い互の目に尖り
  ごころの刃を交える。
  2号刀とほぼ同じシルエットをしており時代特定は容易でした。
  そのため飛騨守氏房、伊賀守金道、出羽大掾國路など同時代の近似工に札が散り、イヤ・通りを受けて多くが
  2の札で正解へと導かれていました。

5号刀 表銘:丹波守吉道(大坂初代)の短刀
  平造り、身幅広く、小板目よくつんで明るく、下半直刃を焼き、中程に表裏揃った節刃を置いて上半は焼き幅の広
  いいわゆる簾刃を焼く。
  個性の強い作品であり、初心者にも正解率が高い刀でした。

今回の参加者は15名と過去最低の人数でしたが、それでも参加者全員が入札参加し、2の札、3の札まで熱心に入札
を繰り返したことで三重県支部長に対し態々御出で頂いた敬意を表することができました。

          


平成24年7月8日は協会本部学芸部長飯田俊久先生を講師にお招きして定例研究会を岐阜市南部コミュニティセンターにおいて開催いたしました。

出題刀は1号刀:脇指 銘 長谷部國信平造り、真棟、重ねが目立って薄く寸伸びた姿。刃寄り棟寄りの肌が流れ、飛び焼き・棟焼き・湯走りが掛かって皆焼を呈し、焼刃の高い部分を分断するような景色が捉えられるところから南北朝期の長谷部派と無理なく鑑せられる。同派において国重は湾れと互の目よりなる刃文構成に対し、本作に示されるような角がかった刃や矢筈風の刃を低い焼刃で繋ぐ刃取りは國信となる。
2号刀:脇指 銘:備前國長舩左京進宗光二郎左衛門尉勝光/永正五年二月吉日二尺に満たない寸詰まり姿に先反りが付いており、室町期の片手打ちと捉えられる。地鉄は小板目が精良に約んで、淡く乱れ映りが立っており備前本場筋の印象が強い。刃文は互の目に角張る刃・尖りごころの刃と腰が開いた複式風の景色を交え、足・葉入り、小さな飛び焼きと金筋が掛かっており、末備前特有の倶利伽羅彫りが加わっているところから末備前諸工に札が集まったが、中にはズバリ勝光・宗光合作とした札もあった。
3号刀:無銘 青江身幅広く、大切先の豪壮な体配に棒樋の樋先が下がっているところから南北朝期と捉えられる。地鉄は板目に杢交じり、総体に細やかに肌立ち、地沸微塵について鎬方には地斑調の乱れ映り、刃方には少しうねった筋状の映りが数条掛かる。さらに刃文は匂い主調の中直刃に小互の目交じり、処々逆足がかり明るく冴え渡る作柄から次吉、次直などに鑑した札が多かった。
4号刀:短刀 銘 繁慶重ねが厚く、元幅広く、かつ先幅を大きく落とした刺刀(さすが)風の造り込みながら、真棟のおろしが一段と急で目立っている点は繁慶の大きな見所として記憶しておきたい。鍛えは板目に大板目を交えて肌立ち、地沸が厚くついて所謂ひじき肌と称される黒く太い地景が頻りに掛かり、刃文は匂い口沈むよく沸づいた湾れに互の目を交え、湯走りと金筋・砂流しが頻りに掛かる。出羽大掾國路の入札があったが同工の刃取りは焼刃の形が整っており、本作のような総体に乱れて整わない様相は一段と相州伝を強調した作域といえる。清麿も良い見方であった。
5号刀:脇指 銘 大和州住人九郎三郎重國居駿河州後於紀伊州明光山作之/羽掃為都筑久太夫氏勝作之元和八年戌八月吉日(棟)鏨物天下一池田権助義照平造り、真棟、身幅広く、重ね厚く、先反り強い。鍛えは地沸よくついた板目が流れ、刃文は浅い湾れ主調に互の目交え、砂流し、金筋盛んに掛かり、帽子は焼き詰める。刀身一面に刀樋の中を表は倶利伽羅、裏は下り龍を浮き彫りする。刀身彫りが主で、茎に長々と刻銘する不格好な小脇指は桃山期に流行したスタイルである。本作は南紀重國を代表する著名な作例であり、大半の方が一本当たりであった。

平成24527日は杉浦良幸氏の講師による定例研究会と23年度総会を関市文化会館にて開催しました。

この日の出題刀は、1号刀が肥前國住人吉信の刀。初代忠吉の娘婿であり正廣、行廣の親でもあるが現存数が極めて少なく、忠吉の補佐役を担っていたと思われます。
作風はいわゆる傍肥前の乱れ出来そのものであり多くの札が正廣、忠國等に集中しました。

2号刀は本日一番の難題、吉岡一文字助義の太刀でした。三寸ほど摺り上げていますが反りの深い鎌倉後期姿をしており、互の目に丁子や尖り刃を交え、刃中にはにぎやかな変化を見せています。
素直に備前とは捉えられても吉岡一文字へとたどり着くには少々手こずられる方が多く見られました。

3号刀は相州住廣正/文安五年二月の脇指でした。平作り大振りの姿に先反りつく室町前中期姿をしており、にぎやかな相州丁子を焼いて相州彫独特の重ね彫が添えられた景色は他に紛れようもなく、多くの方が廣正とその周辺に入札していました。
ちなみに本作は奥州黒石城主重伝と伝えられています。

4号刀は飛騨守藤原氏房の鎬造り脇指です。大切先で豪壮な姿は慶長姿の名残をとどめており、加えてドスンとした手持ちは尾張徳川家中の好みを反映しています。
刃文も荒沸が盛んにからみ、焼き深い一枚帽子から同工へと素直に導かれます。

5号刀は兼常の短刀。平造りで尋常な姿をして、極めてよく練れた美しい鍛え肌に乱れた映りが鮮明に立ち、美濃ものの既成概念を覆す名刀です。
そのため山城ものへの入札も散見されましたが、流石に御当地ものに強い上級者の札はノサダへ入り、ズバリ兼常と見た方も少なくありませんでした。

定例研究会終了後は総会が開催され、23年度の事業報告と会計報告ののちに24年度事業計画案と予算案、役員改選案が承認されました。


◆平成24年3月25日日曜日は博多支部の米田一雄氏を講師にお招きし、平成23年度第6回研究会を岐阜市南部コミュニティセンタ−において開催しました。

今回の出題刀はすべて九州もの、しかも直刃仕立てが中心という意表を突く取り合わせであります。

さらに1号刀から3号刀は「肥前國忠吉」「肥前國住人忠吉作」「肥前國住武蔵大掾藤原忠廣/寛永二年八月吉日」の順であり、同人作が何振りもないだろうという固定概念で多くの方が肩透かしを食いましたが、初代忠吉の作風変遷を比較できるという又とない機会でありました。

4号刀は茎仕立てが伊豫掾宗次に似る「肥前國佐賀住廣貞」の珍品であり、大半の参加者は見るのも初めてでしたが近江大掾忠廣の協力者ではないかとの見解を伺いました。

この日一番の難問が5号刀「筑州住盛高(金剛兵衛尉)/應永五年」の小太刀です。いわゆる稚児指といわれる雛太刀、太刀のミニチュアであり、優雅な姿に大和色が色濃く見てとれ、白けた映りが鮮明に立つところから二王清綱や首を傾げながらも延寿辺りへ入れるのが精一杯でしたが、茎が開けられると全員驚嘆すること頻り。毛利家伝来で太刀拵も添うと聞き及び、傍物ながら侮れない技量の程を思い知らされた次第でした。

米田講師のユ−モアあふれる解説は終始笑い声に包まれ、盛会のうちに至福の一時を過ごすことが出来ました。




◆平成24122日は協会本部学芸員大井岳先生を講師にお招きして新年研究会と懇親会を岐阜市内ホテルスポーツパルコにおいて開催いたしました


研究会は一本入札で行われ、鑑定刀は1号刀:太刀 銘 備前國景安、2号刀:刀 銘 兼元、3号刀:短刀 銘 源左衛門尉信國、4号刀:刀 金粉銘 長義(号 柳生長義)、5号刀:刀 銘 肥前國備中大掾藤原正永/河内守藤原正廣(合作)の5振りでした。

研究会終了後、懇親会に席を移して上位成績者の表彰が行われると、講師大井先生より入札の感想があり、研究会出席者27名中24名の入札参加は協会本部の定例鑑賞会を凌ぐ熱心さであり、しかも平均点が高い。さらに天・地・人位と次席を支部長以下支部三役が番付?通りに獲得されたことは、支部員の前で体面を保つために入札を避けるお歴々が多い中、素晴らしいこととの御褒めの言葉を頂きました。

懇親会の〆には恒例の新年運試しビンゴゲームが行われ、筑州國弘短刀押形ほか刀剣図録、缶ビールセット、カトラリーなどの賞品が次々と幸運者の手に渡っていきました。

1号刀:太刀 銘 備前國景安

腰反り高く元に踏張りをつけ、先にいってやや俯きごころとなり、総体に細身の優美な太刀姿から年代は鎌倉初期を下らない。板目に杢を交えてよく錬れ、地沸つき地景の細やかに入った鍛えに下半淡いながらも不規則に地斑映りが立ち、刃文は直刃を基調に小さな乱れを交えた沸主調の様相を見せていることから、大きく古備前という見方が導かれる。古備前と見て友成や正恒などの札が目立ったが、佩裏下半に景安の特徴とされる角張る刃を交えている。

2号刀:刀 銘 兼元

寸がやや詰まり、鎬地を削いで鎬を高く造り込み、平肉が枯れ、先反りが強くつく点で永正頃から天文頃を中心に多く見られる末古刀の姿と気づくことができる。また、地鉄が白け、強く肌立つ鍛えと尖りごころの互の目や尖り刃、小互の目などを不規則に交えて乱れ、焼きが低く谷や足先が刃先に駆け出し匂い口に柔らかみがあり、沸がつき、砂流しかかるなどは後代や写し物に見る規則的な三本杉とは大きく相違した古調な趣がある。御当地ものであるためかやはり兼元の札が多く、他支部ではよく見られるノサダの札は皆無であった。

4号刀:刀 金粉銘 長義(号 柳生長義)

柳生長義の号を有する、長義極めの大摺上刀である。長義は「備前物の中で最も備前離れした刀工は長義」と古来評されており、相州色の強い作品が多く、本作もその一口である。刃文は様々な形の刃を交えて変化が強く、匂い口が沈んで沸崩れをおこす激しい出来で、大湾れ・肩落ち風の互の目・角張る互の目等、相伝備前の特色が随所に示されており、指裏の下半に角張った互の目が二つ連結した刃文が見られる。これは長義の耳形の刃文と呼ばれるもので短刀に焼かれる場合が多いが、刀にも時折現れる。

5号刀:刀 銘 肥前國備中大掾藤原正永/河内守藤原正廣

小板目がつんで、乱れの低いところは沸・匂いが凝って匂い口が一段と深くなり、部分的にせよ乱れの谷や足先が刃先に向かう途中で一定の線を境にして止まる状態を呈しており、帽子もフクラに沿って直ぐに丸く返るなどの点から、肥前刀と捉えることはさほど難しくない。仔細に見れば地鉄が幾分黒味を帯びてやや肌立ち、元に直ぐ調の焼出しを見せ、かつ乱れと乱れを直刃または浅くのたれた低い焼き刃で繋ぐ刃取りとなり、さらに処々極端に腰のくびれた原爆雲に似た刃を交えていることなどから傍肥前と捉えられる。



平成23年度「支部活動」


平成22年度「支部活動」


平成21年度「支部活動」


平成20年度「支部活動」


平成19年度「支部活動」


平成18年度「支部活動」


平成17年度「支部活動」


平成16年度「支部活動」


平成15年度「支部活動」


平成14年度「支部活動」


平成13年度「支部活動」


平成12年度「支部活動」